長崎の三木 勝風先生が流派内で釣り部を作ったり、船舶免許受験をしたりとコロナの中でも楽しんでいる姿に刺激を受け、昔を思い出してしまった。コロナなど無い幸せだった35年前をちょっとだけ回顧。

三木先生と同じで、私も昔は釣りキチだった。日田市という海の無い地区で育った私は川魚以外見たことも釣ったこともない。大人になり大分市に住むようになり、友達と夜の海を見に行ったら、テトラポットの上から夜釣りをしている一行に出会った。細い竿がぐにゃりと曲がり上がってきたのは大きなチヌだった。私にとって生きている海の魚を見たのはこの時が初めて、海の魚は一週間に一度単車の荷台にトロ箱を高く積んで魚屋のおじさんが運んでくる塩サバのほか冷凍カレイなど全て冷凍ものだった。次の日の昼休みに同じ場所に行って海面を覗いたらなんと水深の浅いこと、人の背丈くらいしか無い水深であんなに大きな魚が釣れるのだと凄く興奮したのを覚えている。それから干潮の度にその海に出かけて海中に入り、夜釣りの人が根がかりして道糸が切れて置き去りにされている仕掛けを大量に集めてまわった。電気ウキ、道糸やハリスの太さ、釣り針の大きさや形、針からビシまでの長さなど釣り場所によって全く違う。テトラの上に置き去りにされた釣り餌の残りも全てノートに記録した。するとこの場所ではこの餌でこの仕掛け、こちらの堤防ではこれだとわかるようになった。それからは釣りに夢中になり空いてる僅かな時間は殆ど釣りに使った。ある日、ナイターでの瀬渡し釣りで転倒し頭を強打し気絶。テトラに挟まって逆さ吊りになってしまい満ち潮で頭に海水をかぶるまで気付かなかった。一人での夜釣りだったので死にかけたことに気付きゾッとした。それで磯釣りやテトラ釣りをやめて船釣りをすることにした。最初は4級船舶操縦士をとったが操船範囲が狭くて物足りず、一級船舶操縦士まで取得した。
息子が2歳の時に新船を買い、息子の泰範が幸せになる様にと『泰幸丸』と名付けた。(普通は縁起を担いで女性の名前をつけるんだが)
そらから釣り道具のほとんどは手作りした。
竿は勿論、五三竹(ごさんちく)を切り出して寝かせて完全乾燥させて作った。鯛やイサキ、ブリ、スズキ、アジなどサビキ釣り🎣の場合は、釣って来たサバやハゲの皮をガラスや一升瓶に貼って一ヶ月以上脂抜きを繰り返して透う明になったら染料やコーヒー、玉ねぎの皮などその時に釣る魚の好む色に染めて成形し、釣り針に結んでサビキを手作りしていた。家中のガラス戸に貼っていたので女房から「来客がある時に生臭い匂いがするからやめて欲しい」とよく言われていた(笑)
太刀魚やエソ、タコなどの大きい針は、超硬質ステンレスやワイヤーなどをバーナーで真っ赤に焼いてハンマ-で成形し返しをつけて針先を焼入れして作った。手作りの針を釣具屋に卸してた。手作り針の特許を取るように勧められたこともある(笑)
地元の週刊釣り新聞のライターも頼まれてやってた。船で出たら大分港の真ん中から遠くの高崎山のお猿さんたちに向かってまず詩吟の発声、素読、コンクールの吟題の練習もしていた(笑)
夜に釣った魚(鯛、スズキ、太刀魚、メバル、アラカブ、ヒラメ、カレイなどなど)を朝早く魚市場に持っていくと毎月の給料より多く稼げていた。その頃の家の中は魚拓だらけだった(笑)

そんな釣りキチも突然、小天真道流の宗家を継承する事になりとても忙しくなった。その2年後、完徹2日目の仕事中に右手4指を切断する大チョンボの事故。
主治医から「もう右手の指は親指も動きません」と言われた時に《神様は乗り越えられる試練しか与えない》という言葉を思い出した。「これはきっと神様が私を試しているのだ」と思い、手術したその夜、家内に「もう右手は使えないらしいが、神様に挑戦する事にした、明日からは50年間あまり使ったことのない左手を使う事になるから刀と扇を持って来てくれ」と言って次の日から毎日左手で要返しの練習を繰り返し、残った右手指を1センチでも長くして刀を支えたいと申し出て、刀を手術室に持ち込み刀の柄の形状に合わせて約一年かけて骨延長手術をした。30年以上続けた会社も辞め、それから吟剣詩舞道だけに専念する事にした。釣りキチやめる覚悟を決め、キッパリ思いを断ち切るために船と電動リールなど釣具の全てを知人にタダであげて今に至る。
コロナに負けないで頑張らねば・・・😊

因みに、
宗家を継承したのが、
平成17年1月22日の午後5時。
指を切断した事故が、
平成19年1月22日の午後5時だった。
ちょうど丸々2年後。
同じ月で同じ日の同じ時間😱
こんな不思議な偶然はまずないだろう。「きっと神様から試されているのだろう」と思った。
※事故の直後救急車が来るまでに2つの誓いをした。
①指があれば… などと絶対に悔やまない。(前を向くのみ)
②何があっても痛いとは絶対に言わない。(家族が心配するから)

嘘の様な本当の話し。(完)